産業用ドローン市場を支える、日本のベンチャー企業
そこで今回は、市場の拡大とともに成長が見込まれる日本のベンチャー企業、「ACSL(6232)」について紹介していきます。
高い技術力により、顧客の要望に応えるビジネスモデル
同社は、産業用ドローンの自社開発や、ドローンを活用した無人化システムの受注開発などを主な事業としています。同社の強みは、最先端の制御技術を核とした、高い技術力を有していることです。
通信・ソフトウェアなどを統合した制御パッケージや高性能な機体プラットフォームを提供するほか、用途別にカスタマイズした産業向け特注機体、特注システムの開発、さらには顧客システムに統合されたレベルのシステム開発まで、事業として幅広く対応しています。
「自ら考えて飛ぶ」最先端の自立制御技術
同社の中核技術である自立制御技術は、人間でいう「頭脳」に相当します。運動機能をつかさどる「小脳」に当たる部分であるドローンの姿勢制御や飛行動作制御等の技術は、耐風性や高速飛行時の安定性、突発的な動作に対する安定性などの点で、競合他社などに対して優位性があるとみられます。
また、目で見ることや自ら考えることに係る機能をつかさどる「大脳」に当たる部分では、画像処理による自己位置推定(Visual SLAM)や光センサー技術(Lider)等のセンサー・フュージョン、AIによる環境認識を開発し、「小脳」部分に結合しています。
これにより、従来までのドローンに搭載されている衛星(GPS等)を用いる制御では実現が難しかった、非GPS環境下での完全自律飛行を実現しました。
IRから読み解くACSLの課題と将来性
同社は、産業用ドローン市場拡大のための技術開発に係る先行投資に注力した結果、第1期から第7期及び直近期である第9期(2021年3月期)では損失を計上しています。今後も、同社の計画どおりに事業展開が推移しない場合や、同社の製品が市場で受け入れられない場合なども考えられ、黒字化に時間を要する可能性もあるでしょう。
しかし、2021年6月に航空法改正案が参議院本会議で可決し同案が成立するなど、政府が2022年度を目途としているレベル4(有人地帯上空における目視外飛行)の実現に向け、法整備が着実に進んでいます。レベル4が整備されると、既に法整備が進んでいるレベル1~3(レベル1・2は目視内飛行、レベル3は目視外飛行)の市場に加え、ドローン物流など、ドローン利用可能な巨大な空間・市場の出現が見込まれます。
そのような状況のもと、同社ではレベル4の技術を前提とした中型物流ドローンの開発と、中型機体の量産化を進めているとみられます。また、従来までの売り切りモデルに加え、初期導入のハードルを下げるサブスクリプションサービスの提供を2021年5月より開始しており、既に複数社から引き合いを受けているようです。
このように、同社は2022年以降に飛躍的な拡大が見込まれる産業用ドローンのさまざまなニーズに応えるべく、積極的に研究開発費を投下してきました。そのため、2021年3月期の経常損失は△1,081百万円となっており、株価は8月20日に年初来安値である2,056円をつけました。同社の日足チャートは下記。
出典:Trading View
2020年8月に発表した中期経営方針「ACSL Accelerate FY20」によると、2023年3月期には売上高50億円、10年後には売上高1,000億円を目指すとしています(2021年3月期の売上高は6億円)。
現在は安値圏にある同社株ですが、中長期的に売上高の伸長が見込まれ、それとともに株価も上昇へ転じる可能性があるのではないでしょうか。
今後も、同社のIR動向及び株価動向には注目していきたいところです。
(参考)
・株式会社ACSL HP
・同社第9期有価証券報告書
https://ssl4.eir-parts.net/doc/6232/yuho_pdf/S100LOW1/00.pdf
・同社第10期第1四半期報告書
https://ssl4.eir-parts.net/doc/6232/yuho_pdf/S100MA5Z/00.pdf
・同社第10期第1四半期決算説明資料
https://ssl4.eir-parts.net/doc/6232/tdnet/2015133/00.pdf
・同社第10期第1四半期決算短信
https://ssl4.eir-parts.net/doc/6232/tdnet/2015288/00.pdf